26年も生きていることを誇りに思え

駄文を書いては捨て書いては捨て

日記 2019/06/16

日曜日である。梅雨とは思えないほどの快晴だが午後には雲が多くなるらしい。

 

 

 

日曜の外は人が多くてうんざりする。

 

平日であれば空席もそれなりにある11時台の準急電車も、休日とくれば話は別である。

老若男女問わず多くの人で座席は支配され、人の話し声で車内は車輪の音と相まって余計に五月蝿い。

 

運良く座席が空いたので、遠慮なく腰掛ける。

ふと前に目をやると、大学生くらいの男女が2人仲良く座っていた。どちらもいかにも今時の若者といった風貌で、この後はどうせタピオカの写真を撮るだけ撮って飲み残すんだろうと邪推した。

 

男の方は顔はお世辞にもイケメンとは言えない顔立ちをしているし、服装も絶妙に格好良くない。靴のチョイスが上下の服とまるで合っていないし、パンツの丈は中途半端に短い。少し前に流行っていたアンクル丈のボトムスから覗く靴下とすね毛が最高に滑稽であった。

 

 

 

と、人の見た目を容赦なくこき下ろしてしまった筆者であるが、かくいう自分も特別凝った服装をしているわけではない。オーバーサイズの白Tにバギーデニムを履き、オールブラックのハイテクスニーカーを合わせるというラフで手抜きな装いである。こんな服装ではとてもじゃないがデートになんて行けるはずはないであろう。その点前にいる彼は相手の目線に立って自らの装いを構築している。これは非常に立派なことのように思えるし、他者視点で物事を考えられる人間は社会においても通用するであろうと、就職活動を終えていない自己中野郎には見えたのであった。

 

 

希死念慮に頭が支配される。

 

 

 

電車は終点に到着し、乗客は一斉に次の目的地を目指して車内を後にする。

 

乗り換えた地下鉄に乗り込んでも人の数は減らなかった。座席は既に人で埋まっている。

仕方なくドア付近に背中をもたれかけることを決め、地下鉄は間もなく発車した。

 

途中駅で親子が乗ってきた。母親とその息子の2人組であった。

なぜかドアの目の前で立ち止まり、2人は筆者の目の前で仲睦まじく談笑している。

 

 

 

 

 

眩しく見えた。

 

 

 

 

無邪気な笑顔で母親に抱きついている息子と、やや脂肪がついていたものの、容姿は整い気品と愛情に満ちた姿の母親。

 

 

 

 

やがて彼らは降りていった。その瞬間、筆者は心の中で、

 

 

「ああ、俺はあんな幸せは掴めないんだろうな」

 

 

と呟いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

日曜日にもかかわらず、筆者の足は大学に向かっていた。

先述した通り未だ就職活動中の身である筆者は、今日付で提出しなければならないエントリーシートを書かねばならないと思い、大学の図書館で作業をすることに決めていた。

 

 

 

ちなみに今日はアルバイトの初回出勤のはずだった。

 

しかしエントリーシートが書き終わっていないことを本当の理由として、熱を出してしまったと嘘をついてサボった。

 

 

 

 

 

 

こうして嫌なことを先延ばしにした筆者は、少し軽くなった心に更なるエンジンをかけようと、タバコに火をつけた。

 

 

 

休日の喫煙所は人が少なくていい。ゴミのように居座る大学生どもがいないだけで、ここまで気分が高揚するのかと思うと、やはり自分は根本的に人間に向いていないのだと再認識した。

 

 

 

 

 

 

日曜日なのにそこそこ混んでる図書館はなんだか落ち着かなかった。なぜか気が散る。

エントリーシートが書けない。書けない。

 

考えがまとまらない。

 

何を書けばいいんだ?

 

俺が伝えたいことは何だ?

 

相手は何を聞きたいんだ?

 

自問に自問を重ねても、その答えは一向に出てこない。

 

 

 

 

気が散る。スマホが気になる。

 

3分に1回はスマホを手に取り、SNSや野球速報をチェックしてしまう。

 

 

 

 

いつもの悪癖だ。

 

 

 

 

やがて筆者はラップトップを閉じ、図書館を後にした。

 

 

少し遅めの昼食を手短に済ませたあと、大学付近の喫茶店を訪れた。

 

狭い店内には休日の活気そのままに客で溢れかえっており、空いていた席はカウンターの数席だけだった。

 

カウンターに座ってタバコを吸い始め、ラップトップをリュックから取り出す。さあやるぞ、という声は出さなかったが、準備を整え、いざ再びエントリーシートの執筆に向き合う。

 

 

 

ここでは結局1時間足らずしか作業をしなかった。妙に話し声が気になったり、カウンター越しの店員の作業に気が散ったせいだ。しかし作業はそこそこ進み、エントリーシートの進捗は20%から50%まで進めることができた。

 

 

 

 

 

 

 

今わたしは帰路についている。

隣にはベトナム人らしき男が大小異なるスーツケースを2つ持っており、とてつもなく邪魔である。

 

 

 

 

邪魔という言葉を使って思った。

 

 

 

 

「誰かの邪魔にはならないけれど、誰かの心にはきちんと存在が刻み込まれている。」

 

 

 

 

そんな人間になりたい。